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『いきるをつくるくらしの「素」展』  vol.2 器の素 〜土地に培われた技と素材の輪をつなぐ〜

記事公開日:2021.05.27

 

『いきるをつくるくらしの「素」展』  vol.2 器の素 - アサギ椀

〜土地に培われた技と素材の輪をつなぐ〜

2021年5月28日(金)〜7月25日(日)
mumokuteki 2F HOME&RENOVATIONスペース OPEN 11:00-19:00(水曜定休日)

 

かつて京の町で愛用されたという「浅葱椀」は、京都ならではの美を体現する、常の器でありました。その精神を受け継ぎ、現代の工芸の課題を解決することを目指して、「アサギ椀」は生まれました。
現代の課題—それは一言でいうと、「生態系をつなぐこと」。
地域の風土によって洗練された、異なる専門性をもつ職人の技が、次の世代に受け継がれること。地域の素材が人のくらしの中で循環することで、その素材を生み出す環境といとなみも守り育まれること。作り手の想いと使い手の感性が、言葉を超えてつながること。技と素材、そして人のこころは、互いに密接に関係しながら文化の生態系となり、くらしの「素」をつくります。
アサギ椀は、京都の漆器づくりの生態系をつなぎなおすプロジェクトです。

 

日常のくらしをつくる、京都の技と素材

<素>

京漆器は、京の茶道文化を背景として歴史の中で洗練されてきました。そのモノづくりは、漆塗りの職人だけでなく、木地の職人、道具や、素材をつくる職人など、異なる技を持つ人々の「輪」によって、地域の中で受け継がれてきました。しかし、茶道具をつくることだけで職人たちが仕事を続けることは、難しいことでした。現代の人のくらしに寄り添う日常の器をつくることが必要だ-職人たちは、考えました。日常の器というものは、本来その地方の気候風土に根ざす材料でできていたはず。その地域の歴史に受け継がれた作り手たちの技や美意識は、その地域のモノづくりに寄り添ってきた素材でこそ、くらしへとつなぐことができるに違いない-そんな想いから、アサギ椀は生まれました。

 

師から弟子へ、つなぐために支えあう

<プロセス>

漆器にとって、漆と木の関係性は、肉と骨。漆塗りがいくら上手にできても、骨格である木地が美しくなければ、漆器は美しくしあがりません。京都随一の木地職人と言われる西村直木氏の技術を次の世代に受け継ぐことは、京漆器の真髄を大切に想う職人たちが共有する、地域産業としての重要課題でした。直木氏と長年仕事をともにする塗師(漆塗りの職人)の西村圭功氏は、一匹狼であった直木氏に弟子を取るよう長年にわたり説得してきましたが、ついには自らの弟子を直木氏に託し、木地師としての養成を依頼しました。若い職人たちが師から得た学びを身体に落とし込む手段のひとつとするため、職人仲間が協力し、アサギ椀のかたち作り、体制づくりに、奔走しました。

 

必然のかたちをうむ、生態系を未来へ

<モノ>

京都の日常の器とは、どのような形であるべきか-関わる職人たちが試行錯誤した末に、「これだ」とたどり着いたかたちは、直木氏が長年素材と向き合い、お茶道具を作りつづけることで培われた感覚から、自然と導きだされたものでした。その土地の歴史と、圧倒的な修練と、風土にかなった材料から立ち現れる、必然のかたち-薄くて、軽い、てのひらに包み口に当てると、温かくて柔らかい。アサギ椀は現在、独立を迎えようとする塗師・木地師の若い職人たちの仕事を生み出す一方で、心を育くむ器として、保育園などでも利用されています。またその売上の一部は、京都で漆の木を植え育てるためなど、京漆器を次の世代に受け継ぐためのより多角的な生態系づくりに活用されています。

 

京の「日常のかたち」を求めて

 

浮世絵に描かれ、芭蕉の句にも詠まれるなど、江戸初期の文献に散見するアサギ椀は、「浅葱椀」「浅黄椀」「あさぎ椀」「縹椀」とその表記にはバラつきがあります。昭和50年に書かれた『漆椀百選』には、「縹(あさぎ)椀は,縹・赤・白の漆で花鳥を描いたものといふ」(『荒川浩和 光琳社 資料編)とされており、概して装飾的であったようです。

 

新生「アサギ椀」は、かつての浅葱椀の形や柄を再現したものではありません。しかしそこには確かに、茶道具を作ることによって洗練され、西村直木がロクロ木地師として、西村圭功が塗師として受け継いだ、京都の技と美があります。

 

雅(みやび)な逸品ものが得意の京都で、何が京都らしい「日常」なのかを突き詰めようとしましたが、京都の素材を使い、その受け継がれた技と美にこころを委ねることで、必然的に「京都らしい」と思う、かたちに導かれました。

 

出展者プロフィール

塗師(漆を塗る職人)である西村圭功氏、ロクロ木地師(椀などの漆器のベースを作る職人)である西村直木氏に師事し、両師匠の技と想いを受け継ぐ、京漆器の若き担い手。

 

 

ロクロ木地師:永井綾/上田量啓
塗師:飯島勇介/後藤久美

 

発起人: 石川光治(故人 石川漆工房)
西村直木(ロクロ木地師)
運営メンバー : 石川良(石川漆工房)
堤卓也(堤淺吉漆商店)
西村圭功・西村洋子(西村圭功漆工房)
プロデュース: 松山幸子(一般社団法人パースペクティブ)
協賛:工藝の森
アサギ椀の収益の一部は、一般社団法人パースペクティブの『工藝の森』による、京都の森で漆を中心とした工芸素材を植え育てる活動に寄付されます。

 

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期間限定『アサギ椀×mumokuteki』特別コラボメニュー

 

展示会場であるHOME&RENOVATIONスペースのとなり、mumokuteki cafeにて、期間限定の特別メニューをご提供しております。
実際にお手にとって使っていただくことで、心地よさ、美しさ、軽さ、繊細さ、温かさなど、たくさんのことをお伝えしたいと思いました。
丁寧な「素材」と「プロセス」で、アサギ椀のために特別に作られたおいしいごはんやスイーツを、この機会にぜひお楽しみください。

 



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