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いきるをつくるくらしの「素」展 Vol.4 組む ~伝統の未来を再構築する京組子の手仕事~

いきるをつくるくらしの「素」展  Vol.4 組む ~伝統の未来を再構築する京組子の手仕事~

[ホール使用日]
2021年11月16日


いきるをつくるくらしの「素」展

Vol.4 組む

~伝統の未来を再構築する京組子の手仕事~

 

タテ、ヨコ、ナナメ。

パーツの集合部に隙間はなく。どこにも、歪みが見られない。

まるで人間のなせる技ではないと思ってしまう。

組子細工は小さな木片パーツを根気よく多数組み合わせて全体のイメージを作り上げていきます。ミクロの視点で組み合わせていく根気と精度の連続が、大きな空間を彩る圧倒的存在感を作ります。

現代の技術を使えば3Dプリンターや切削マシン、レーザーカッターを利用することでよく似たものを短時間で簡単に安く作ることも可能です。

しかし、どこまでも「手づくり」にこだわります。

手でつくるということは、便利や効率を理由にどんどん技術進化していく世の中に対するアンチテーゼのようなものかもしれません。

自然界には、完全な左右対称な形や、歪み無く整然と揃っているものはありません。

マシンとヒューマン、デジタルとアナログなどに対比されるように、よく見ると僅かなゆらぎがあり、それでいて端正に整っているように見える状態を、気づかぬうちに人間は心地良いと感じているのです。

手でつくることこそ本当の豊かさと言えます。

伝統とは過去のものではなく、先人の知恵を未来に継続していくものです。これまでの伝統の当たり前を問い直し、ものが作られる過程、職人の育成、商品を必要とする人々との関係を再構築する姿勢が求められています。今回の展示では京北の里山で工房を構える村山木工による京組子プロダクトを展示します。村山木工では「組木」*1と呼ばれるものも「組子」*2として捉え、伝統工芸技術のひとつである指物を「組子」的な工芸品に昇華させることによって、これまでの「組子」の概念にとらわれない表現を確立させ、「立体組子」や「曲面組子」という新しい京組子の伝統を作り上げています。

vol.4「組む」では、村山木工による京組子プロダクトを通じて、伝統と暮らしを考えます。会期中、様々な催しを企画し、みなさまを京組子の世界へご招待します。

*1組木:クギなどの金物を使わずに指物の技術で木と木を組み合わせて作るもの全般。

*2組子:組木のなかでも直線を交差させて作る三角形や菱形の(地組)と呼ばれる枠に(種)と呼ばれるパーツを嵌め込んで作る幾何学文様のパネル。

 

<素材>「京組子のための最高の条件」

最古の組子細工は、飛鳥時代に建てられた法隆寺の装飾に見られます。その技術は、建具や欄間などに使われるようになり、代表的な日本の伝統工芸として現在に至ります。
組子細工はたくさんの木片を幾何学的パターンに組み、それが平面上に連続していくところに特徴があります。その作業は想像を絶するほど根気が必要な作業であり、ごくわずかな寸法差があっても組み上げることはできません。村山木工では上質な仕上がりのために、京都京北の土地で育ち、熟練の丁寧な加工工程を経たヒノキ材や杉材を利用します。仕上がりが映える白く美しい木肌、加工や組み上がりの精度を高める均質な密度、組み上げられた後もずっとその形を崩すことがない絶妙な素材のコントロール。これらは最高の京組子細工をつくるための条件であり、これほど恵まれた環境はないと言えます。

 

<プロセス>「ものづくりへの意識を再構築する」

伝統とは新しい捉え方の連続です。京組子細工でも同様で、過去と同じことを繰り返すことではありません。約二千年の間に生まれた伝統の型を継続することよりも、新しい形でつないでいくことに未来があります。
組子は平面で構成されるものという当たり前が、もし滑らかな曲面構成になるとしたら、組子細工を活かすことができる可能性は一段と広がり、これまで見たこともない空間を生み出せるのではないでしょうか。京都の町に組子作りの文化ができるとしたら、どんな人の関係を生み出すでしょうか。
ひとつ一つのピースをどのような気持ちで組み合わせるか、どのような人との出会いと信頼関係を積み重ねるか、どのような変化の連続を想い描くか。京組子細工はただひたすら同じようにパーツを組んでいくことではなく、新しい人やものの関係を取り込み、ものづくりへの意識を立体的に組み立て、常に改めていく行為なのです。

 

<もの>「京組子という新しい伝統」

組子細工には伝統の過程で生まれてきた基本の模様が存在します。
照明器具に組子の伝統の模様を利用することで、現代の生活の中に新しい明かりとの向き合い方が生まれます。
室内の空間が京組子によって彩られると、そこにはこれまで感じたこともない陰影が現れます。
指物と組子の技術を融合させた「立体組子細工」は新しい京組子の伝統のかたちです。
伝統は組み方次第です。
どのように素材、パーツ、技術、担い手、買い手、シーンを現代に組み合わせていくか。
それらの最高の組み方とは何か。何を組み合わせると新しい伝統が起こるのか。
とらわれることなく解体し、組み合わせた先に生まれるものが京組子の伝統なのです。

 

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